部下のタイプ別指導法|4つの性格パターンと効果的なアプローチ
はじめに:なぜ同じ指導法が通用しないのか?
「Aさんには効果的だった指導法が、Bさんには全く響かない」
「同じことを伝えているのに、部下によって反応が全く違う」
このような経験をお持ちの管理職の方は多いのではないでしょうか。実は、人にはそれぞれ異なる性格パターンがあり、同じメッセージでも受け取り方や反応の仕方が大きく異なります。
心理学の分野では、人の行動パターンを4つのタイプに分類する手法が広く活用されています。今回は、この4つの性格パターンを理解し、それぞれに最適な指導法をご紹介します。
4つの性格パターンとは?
人の性格は、大きく2つの軸で分類できます:
縦軸:行動のスピード
- 素早い行動を好む(積極的)
- じっくり考えて行動する(慎重)
横軸:重視する価値
- 課題・結果重視(タスク志向)
- 人間関係重視(人間関係志向)
この2つの軸の組み合わせにより、以下の4つのタイプに分類されます:
- ドライバータイプ(積極的×課題重視)
- エクスプレッシブタイプ(積極的×人間関係重視)
- アナリティカルタイプ(慎重×課題重視)
- エミアブルタイプ(慎重×人間関係重視)
タイプ1:ドライバータイプの特徴と指導法
特徴
- 決断が早く、結果重視
- リーダーシップを発揮することが多い
- 効率性を重視し、無駄を嫌う
- 直接的なコミュニケーションを好む
- 時間に厳格で、スピード感を重視
見分け方のポイント
- 会議では積極的に発言し、結論を急ぐ
- 「で、結局どうするんですか?」といった発言が多い
- デスクの上は整理されており、スケジュール管理が徹底している
- 話す時は要点を簡潔にまとめる
効果的な指導法
✓ 結果とメリットを明確に示す
「この作業を改善することで、月の売上が15%向上します」といった具体的な数値と成果を示しましょう。
✓ 簡潔で要点を絞った指導
長い説明は避け、「何を、いつまでに、どうやって」を明確に伝えます。
✓ 自主性を尊重する
「方法はお任せしますが、来週金曜日までに完了してください」といった、裁量権を与えた指導が効果的です。
✓ 挑戦的な目標を設定
「今四半期の目標を120%達成してみませんか?」といった、やりがいのある目標設定を行います。
注意点
- 感情的な話や人間関係の問題は後回しにされがち
- 細かいプロセスの説明は嫌がられる可能性がある
- 批判的な指導は反発を招きやすい
タイプ2:エクスプレッシブタイプの特徴と指導法
特徴
- 社交的で表現力豊か
- アイデアが豊富で創造性が高い
- 人とのつながりを大切にする
- 楽観的で前向きな思考
- 変化を好み、単調な作業は苦手
見分け方のポイント
- 会話中に身振り手振りが多い
- 「面白そうですね!」「楽しそう!」といった表現をよく使う
- デスクには写真や小物が多く、個性的な装飾がある
- 人との関わりを重視し、チームワークを大切にする
効果的な指導法
✓ 熱意とビジョンを共有
「この新しいプロジェクトで、お客様にこんな笑顔を届けられるんです」といった、感情に訴えかける指導が効果的です。
✓ 創造性を活かす機会を提供
「あなたのアイデアでこの企画をより良くしてください」といった、創造性を発揮できる場を与えます。
✓ 承認とフィードバックを頻繁に
「その発想は素晴らしいですね!」「チームのムードメーカーとして本当に助かっています」といった、こまめな承認が重要です。
✓ 楽しさと意義を伝える
単調な作業でも、「この作業がお客様の満足度向上にどう繋がるか」を説明し、やりがいを感じてもらいます。
注意点
- 詳細な作業や継続的な集中が必要な業務は苦手
- 批判的な指導は大きく落ち込む可能性がある
- 数値や論理だけでは動機付けが難しい
タイプ3:アナリティカルタイプの特徴と指導法
特徴
- 論理的で分析が得意
- 正確性と品質を重視
- データや事実に基づいて判断
- 計画性があり、準備を怠らない
- 慎重で、リスクを避ける傾向
見分け方のポイント
- 「データを見せてください」「根拠は何ですか?」といった質問が多い
- 資料や情報を詳しく調べてから行動する
- デスクは整理整頓され、必要な資料がファイリングされている
- 会議では具体的な数字や事例を求める
効果的な指導法
✓ 論理的な説明と根拠を示す
「過去3年間のデータを分析した結果、この手法が最も効果的だと判明しました」といった、データに基づく説明を行います。
✓ 十分な情報と時間を提供
急な変更や決定は避け、事前に必要な情報を整理して伝えます。
✓ 専門性を認める
「あなたの分析力に期待しています」「この分野の専門家として意見を聞かせてください」といった、専門性への敬意を示します。
✓ 段階的な指導
一度に多くのことを求めず、ステップバイステップで指導を行います。
注意点
- 感情的な判断や直感的な指導は受け入れにくい
- 急な変更や曖昧な指示はストレスを与える
- 人間関係の問題は軽視される傾向がある
タイプ4:エミアブルタイプの特徴と指導法
特徴
- 協調性が高く、チームワークを重視
- 安定性と調和を求める
- 他人の気持ちに敏感
- 忍耐強く、着実に作業を進める
- 変化に対して慎重で、時間をかけて適応
見分け方のポイント
- 「みんなはどう思いますか?」「チーム全体のことを考えると…」といった発言が多い
- 対立を避け、和を重んじる
- 相手の話をよく聞き、共感的な反応を示す
- デスクには家族の写真や、温かみのある小物が置かれている
効果的な指導法
✓ 安心感と信頼関係を築く
「いつも丁寧な仕事をしてくれてありがとう」「何かあったらいつでも相談してください」といった、安心できる環境を作ります。
✓ 段階的な変化を提案
急激な変更は避け、「まず小さく試してみて、慣れてきたら徐々に拡大していきましょう」といった、段階的なアプローチを取ります。
✓ チームや他人への貢献を強調
「あなたの丁寧な作業のおかげで、チーム全体の品質が向上しています」といった、他人への貢献を認める指導が効果的です。
✓ 十分な時間と支援を提供
新しい業務を覚える際は、十分な時間と支援を提供し、プレッシャーを与えないよう配慮します。
注意点
- 急な変更や高圧的な指導は大きなストレスを与える
- 競争的な環境は苦手
- 自分の意見を主張するのが苦手で、本音を言わない場合がある
実践的な活用方法
1. 観察による見極め
日常の行動や発言を観察し、以下のポイントでタイプを判断します:
会議での発言パターン
- 積極的に発言する → ドライバー・エクスプレッシブ
- 慎重に発言する → アナリティカル・エミアブル
重視する内容
- 結果や効率 → ドライバー・アナリティカル
- 人間関係や感情 → エクスプレッシブ・エミアブル
2. 複数タイプの組み合わせ
人は一つのタイプに完全に当てはまるわけではありません。主要なタイプを把握しつつ、サブタイプも考慮した指導を行います。
3. 状況に応じた使い分け
同じ人でも、状況によって異なるタイプの特徴を示すことがあります。プロジェクトの種類や時期に応じて、アプローチを調整します。
まとめ:多様性を活かすリーダーシップ
部下のタイプを理解し、それぞれに適した指導法を実践することで、以下の効果が期待できます:
- 指導の効果が向上:相手に適した方法で伝えることで、理解度と納得度が高まる
- 部下のモチベーション向上:個性を認められることで、やる気と自信が向上する
- チーム全体のパフォーマンス向上:多様な強みを活かした役割分担が可能になる
- 信頼関係の構築:相手を理解した指導により、深い信頼関係が築ける
重要なのは、どのタイプが優れているかではなく、それぞれの特性を理解し、個人の強みを最大限に活かすことです。一人ひとりの個性を大切にしながら、チーム全体の成果向上を目指しましょう。
あなたのチームにはどのタイプの部下がいますか?まずは一人ひとりの特徴を観察し、今回ご紹介した指導法を試してみてください。きっと新しい発見があるはずです。
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28歳の時保険代理店業で起業し、保険会社の年間表彰に5年連続で選ばれる会社に育てる。
そのすぐ後、スタッフの半分が一気に会社を辞める事態になり「自分を変えなければ」と発起しNLPや心理学を本気で学ぶ。
『過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる』ことを知り、全国の経営者やビジネスパーソンにもそれを伝えるため、セミナー活動や研修活動をしている。
【保持資格】
全米NLP トレーナー・LABプロファイル®トレーナー
交流分析士・心理カウンセラー・行動心理士