クレーム対応するスタッフの特徴と心理、上司がすべきサポートとは?
顧客から「上司を呼べ」「対応が悪い」と言われた現場スタッフを見て、上司としてどう支援できるでしょうか?販売・接客の現場では、スタッフ個々の対応が企業全体の信頼に直結する場面が少なくありません。
最近、企業のマネージャー層からよく聞かれるのが、「新人ならともかく、40代以上のベテランスタッフでも、クレーム対応に困る」という悩みです。指示の理解が遅く、何度言っても同じミスを繰り返し、自主的に改善に取り組む姿勢が見られない…。そのようなスタッフが顧客と直接やり取りをする場面で、信頼を損なうケースが増えています。
とくに「年齢を重ねているからこそ安心して任せたい」という顧客の期待を裏切るような応対があった場合、クレームはより強く、深刻化しやすくなります。そして、こうした現場に直面するマネージャーは「本人にやる気がないのか」「どう育成すればよいのか」と、強いジレンマを感じています。
この記事では、クレームを受けやすいスタッフの心理特性と行動パターンに加え、ベテランスタッフに見られる「対応できない傾向」とその背景、そしてマネージャーが取るべき現実的な対応について、心理学・人材育成の視点を交えて詳しく解説します。
1. ベテランでもクレームを受ける理由とは?
- 成長の停滞と自己効力感の低下:長年のルーチンワークによって、新しいやり方や変化への適応が難しくなっている。
- 叱責への耐性の低さ:「今さら怒られたくない」というプライドがフィードバックの受け入れを妨げる。
- 主体性の欠如:「言われたことだけはやる」という受け身の姿勢がトラブル対応を困難にする。
- 顧客視点の欠如:「自分の経験が正しい」という思い込みで相手の気持ちに寄り添えない。
- 自己保身の心理:クレームから逃げたい心理が、問題回避や責任転嫁につながる。
2. クレーム対応で見られる典型的な行動パターン
- 表面的な謝罪や形式的な対応にとどまる
- ミスを認めたがらず、状況説明ばかりを繰り返す
- 「自分では判断できない」と即座に上司を呼ぶ
- 不安や緊張が表情や声に表れ、余計に顧客の不信感を招く
3. クレーム対応に苦しむスタッフの心理背景
ベテランスタッフが変化に適応できない背景には、「自己効力感の低下」と「現状維持バイアス」が存在します。「自分にはできない」「今さら学んでも意味がない」といった思考パターンが、行動のブレーキとなっているのです。
また、「評価されたいけれど、失敗したくない」という矛盾した感情が、過剰な自己防衛や逃避行動につながりやすくなります。心理的安全性が確保されていない職場では、こうした傾向がさらに強まるのです。
4. マネージャーが取るべき5つの具体策
- フィードバックは具体的に、感情を交えず:事実ベースで説明し、相手の感情を逆なでしない。
- 自己評価を促す質問:「どう感じた?」「何を意識していた?」と内省を促す。
- 小さな成功体験の積み重ね:「今回は○○ができていたね」と達成感を与える。
- 役割と期待の明確化:「ここまでは任せる」と範囲を具体的に設定する。
- メンタル面のサポート:自己肯定感を高める声かけと、安心できる環境づくりを意識。
5. 実践事例:ある店舗での変化のプロセス
40代後半のスタッフAさんは、以前からクレームを受けやすく、現場でも「任せづらい」と言われていた。しかし、週1回のロールプレイとフィードバックにより、自分の癖や言い回しを見直すようになり、3か月後には「前より話しやすくなった」と顧客から評価されるようになった。小さな成功体験と安心できる上司の関わりが、変化の原動力となったのです。
6. 組織としての長期的アプローチ
- リスキリング研修の導入:年齢に関係なく「学び直し」を前提とした育成制度。
- マネージャーへのコーチング導入:感情マネジメントや伝え方の技術向上。
- 評価制度の見直し:努力や改善プロセスを評価する文化づくり。
- 経営層のメッセージ発信:「誰もが成長できる場」という価値観を社内に浸透させる。
まとめ:ベテランスタッフ育成は、現場の未来を支える投資
クレーム対応は、企業の印象を左右する最前線の仕事です。そして、対応に課題のあるスタッフを「放置しない」「諦めない」ことこそが、現場の成長に直結します。
マネージャーの悩みは、決して個人の責任ではありません。育成体制・心理的支援・現場と連携した改善アプローチを通じて、ベテランスタッフの変化を促し、顧客からの信頼を回復する道筋を作ることが、今、企業に求められています。

28歳の時保険代理店業で起業し、保険会社の年間表彰に5年連続で選ばれる会社に育てる。
そのすぐ後、スタッフの半分が一気に会社を辞める事態になり「自分を変えなければ」と発起しNLPや心理学を本気で学ぶ。
『過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる』ことを知り、全国の経営者やビジネスパーソンにもそれを伝えるため、セミナー活動や研修活動をしている。
【保持資格】
全米NLP トレーナー・LABプロファイル®トレーナー
交流分析士・心理カウンセラー・行動心理士