論理的な説得、正面からのお願い
「情」で動く人
まんトレも”中の人”も、保険業界に多くの知人・友人がいます。彼らは、保険会社の商品を販売することで収入を得ている人たちです。
この人たちのほとんどが感じている事があります。
「保険会社が、私たちの会社の経営云々を言うと腹が立つ。」
という事です。
どういうことか、具体的に説明しましょう。
保険会社は、代理店(販売店)に対して、販売促進の話をするわけです。もっと頑張って売ってください、と。これが一昔前だとシンプルだったのです。
●とにかく頑張ってやりましょうよ。
●私の立場もあるから、何とかお願いします。
なんていう風に、いわばお願いされて保険代理店は動いたものです。
情に訴えられると、仕方ない・・・と言いながらも動くものなんです。
なぜなら、自分を頼ってくれるからなんだかんだ言ってうれしいのです。
「理」で嫌悪感を抱く事
ただ、情で動く以上は、それに応じた人間関係が必要となります。それを作るのは、営業社員の力量でもあるので、誰にでもできる事ではないのです。そこで、頭のいい保険会社は考えました。「情」という非合理な感情に訴えるより、「理」で代理店を動かそう、と。
彼らは何をやったかというと、代理店の経営分析シートなどを作り、こう言う訳です。「あなたの会社は、この部分が弱い。だからここを補強しなくてはならない。」こういった物言いに、カチンとくる代理店の社長は多いようです。
少し難しい話ですが、中小企業の戦略は、小さな範囲で強みを作るのが定石です。あれもこれもとやっていれば、大企業との競争に勝てるわけがありません。小さい範囲で深いかかわりを持つから中小企業であるからこその価値が出るわけです。
話を戻します。
理詰めの話は、相手の頭を納得させることはできます。確かに反論の余地はないよね、と。しかし、腹落ちすることは難しいのです。やりたい、という衝動を形作りにくい営業推進スタイルと言えます。
「イヤ」から始めるか、「ヤリタイ」から始めるか
NLP的モチベーションの考え方
人の行動の動機は、主に二つあると言われています。
●嫌な事や苦痛から逃げるために行動する
●快楽を求めて行動する
というものです。
どちらかといえば、前者の方が強い、と考えられています。
ならば、前者を使ったほうが行動につながりやすい、と考えがちですがそこには落とし穴があります。
これもNLPで学ぶことですが、モチベーションには別の観点から二つのものがあります。
●外発的動機(外からの刺激に反応して行動に移す)
●内発的動機(内から湧き上がる刺激に反応して行動に移す)
たとえば、外発的動機は、
「これをやらなければ叱られるからやる。」「これをやれば給料が上がるからやる。」
といったものです。
逆に、内発的動機は、
「ワクワクしてやりたくてしょうがない」
といった状態でしょう。
前述の例を当てはめてみると、「理」による説得は、
やらざるを得ない理由が提示されており、その理由をなくすために行動する、
という事になりそうです。
つまり、外発的動機です。
じゃあ、「情」による行動はどうでしょう。
営業の人を助けてあげたいから行動する
という、自発的な行動、つまり内発的動機です。
一見、時代遅れに見える営業スタイルが、人を自ら動かしていたのかもしれません。
外発的動機は寿命が短い
もうひとつ、外発的動機の問題点があります。
外発的動機は、その危機が去ってしまえば、モチベーションも消えてしまうという事です。たとえば、保険会社が「理」で代理店を説き伏せたとします。その時にはいやいやながらもやるしかないか、と思うわけですが保険会社の人間が去った瞬間からモチベーションはどんどん落ちていきます。
逆に、その「危機」は次第に記憶から薄れ、保険会社に対する憤りのような感情だけが残ります。こういった憤りをどんどん積み重ねているのが、保険会社が代理店に対して行っている”営業”なのです。
私たちが社員に課す、営業ノルマもまた同じです。年度末をとりあえずしのげば一気に士気は下がります。4月、5月と緩やかなムードですごして、第一四半期の締めになって慌て始めるシーン、結構あるんじゃないでしょうか。
内発的動機は如何にして発動するか
じゃあ、お願い営業をすればいいのか。
となると、少し短絡的です。
お願い営業が有効になるのは、様々な条件が関与します。
例えば、相手の方が営業担当者に対して、何かしらの好意を持っている必要があります。行為というより信頼関係とでもいったほうが近いかもしれません。全く人間関係のない人の頼みごとであれば、聞けないものの方が多いのですから。
営業に「理」は必要です。しかし、「理」だけで人を動かすことはできません。そこに、「情」が絡まなければ人は動かないのです。
考えても見てください。
報酬を得られる仕事をするのが嫌で会社を辞め、ボランティアにいそしむ若者の事を。
彼らは、報酬の対価として働くという外発的動機に飽き飽きしています。むしろ、報酬がないからこそ、自分の価値を認められる内発的動機が発動するわけです。
で、リーダーである方が、こういった人たちを動かすには、彼らの心を動かさなければなりません。その最短距離といえるのは、「リーダーであるあなたのために働きたい」とメンバーに思わせる事です。その秘訣は、NLPを学ぶ過程で発見できるはずです。実際に多くの方が、部下に対するリーダーシップを強く発揮できるようになっています。
NLPはテクニックというイメージが強いし、それは否定しません。しかし、そのテクニックを超えた先には、人間そのものの本質を理解するプログラムがあります。ぜひともその門をたたいていただきたいと思います。
28歳の時保険代理店業で起業し、保険会社の年間表彰に5年連続で選ばれる会社に育てる。
そのすぐ後、スタッフの半分が一気に会社を辞める事態になり「自分を変えなければ」と発起しNLPや心理学を本気で学ぶ。
『過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる』ことを知り、全国の経営者やビジネスパーソンにもそれを伝えるため、セミナー活動や研修活動をしている。
【保持資格】
全米NLP トレーナー・LABプロファイル®トレーナー
交流分析士・心理カウンセラー・行動心理士