
- 部下が動けないときに、上司が確かめたいこと
- 日常の仕事で使える、具体的な声かけ5例
- 次の面談で一緒に決めたい3つの確認
「周りからどう思われるかは気にしている。でも、自分からは動こうとしない」
部下を見て、そんなもどかしさを感じたことはありませんか。声をかけたいのに、「気にしすぎ」「もっと積極的に」と言うだけでは、話が進まないこともあります。
まず確かめたいのは、本人が何に迷っているのか、何を任されていると理解しているのかです。そのうえで、取り組む行動・判断してよい範囲・相談するタイミングを具体的に話し合います。
この記事では、周囲の評価を気にして動けないように見える部下に対して、上司が確認したいことと、仕事の場面で使える声かけを紹介します。
「そんなに気になるなら、動けばいいのに」と思うことがある
私自身、仕事の中で不思議に感じることがありました。
周りの評価は気になる。認めてもらいたい気持ちもある。でも、周りと一緒にやってみようという行動には、なかなかつながらない。
正直に言えば、「そんなに気になるなら、動いてみたらいいのに」と思ってしまうんです。
ただ、こちらにとって自然な一歩が、相手にも同じように見えているとは限りません。
私が伝えたいのは、「どうせ人の目を気にするなら、周りの人と一緒に頑張る方向へ使えないだろうか」ということです。
けれど、それを相手への要求だけで終わらせないためには、伝える側にも工夫が必要だと思います。
部下が動かない理由を、性格だけで決めない
「評価が気になる」と「仕事の進め方が分かる」は別のことです。外からは同じように見えても、確かめるべき点はいくつかあります。
| 確かめたいこと | 上司から聞けること |
|---|---|
| 何をすればよいか分かっているか | 「今、どこまで進めればよいと考えていますか」 |
| 判断してよい範囲が伝わっているか | 「自分で決めてよい部分は、どこだと理解していますか」 |
| 知識や経験が足りているか | 「進めるために、説明や練習が必要なところはありますか」 |
| 仕事量や優先順位に無理がないか | 「今の仕事の中で、何と何が重なっていますか」 |
| 周囲の反応で気になることがあるか | 「進めるうえで、気になっていることはありますか」 |
これは相手を分類する表ではありません。本人の話を聴き、必要な支援を考えるための確認です。
青森県のOJTマニュアルでも、失敗した職員への対応では、性格や不注意に目を向ける前に、知識・経験の不足を見て、必要な説明や次回の進め方を話し合うことが示されています。青森県「OJTマニュアル〈事例編〉」本文5ページ
「人の目が気になるから動かない」と決めてしまうと、説明不足や業務量の問題を見落とすかもしれません。こちらの見立ても、本人に確認したいところです。
「もっと積極的に」を具体的にする、声かけ5例
以下は仕事の場面を想定した会話例です。相手や職場の状況に合わせて調整してください。
1.「気にしすぎ」から、気になる点を確かめる質問へ
「そんなこと、気にしなくていいよ」と言いたくなる場面でも、まずはこう聞いてみます。
「進めるうえで、何が気になっていますか。話せる範囲で教えてください」
人前で答えにくそうなら、個別に話せる時間を取ります。すぐに理由を説明できなくても、答えを急がせず、作業のどこで止まっているかから一緒に確認できます。
2.「自分で考えて」から、任せる範囲を示す言葉へ
自分で判断してほしいなら、その範囲も伝えます。
「資料の構成は自分で考えて進めてください。金額と納期は、先方へ伝える前に私と確認しましょう」
何でも自由にしてよいのか、どこかで承認が必要なのか。上司には当たり前でも、部下には曖昧なことがあります。
主体性を求めることと、確認の仕組みをなくすことは別です。顧客への約束や安全・法令に関わる判断など、事前確認が必要な部分は明確にします。
3.「もっと積極的に」から、今日の一歩を話し合う言葉へ
積極性を求めるだけでは、何を変えればよいか伝わらないことがあります。
「次の打ち合わせでは、担当業務で気づいたことを一つ共有してもらえますか。準備で困ることはありますか」
最初から大きな提案を求める必要はありません。質問を一つ用意する、途中までの案を見せるなど、本人が取り組める行動を話し合います。
負荷の高い仕事を抱えているなら、先に優先順位や分担の調整が必要です。
4.「いつでも相談して」から、相談する場面を決める言葉へ
声をかけてよいタイミングが分からず、止まっている場合もあります。
「明日の15時に、途中の状態を一緒に見ましょう。それより前に判断に迷ったら、完了を待たずに声をかけてください」
「誰に」「いつ」「どの状態で」相談するのかを決めておくと、お互いに確認しやすくなります。
相談を受けたときに、毎回「それくらい自分で考えて」と返していないかも振り返りたいところです。
5.「やればできる」から、役立った行動を伝える言葉へ
行動が見られたときは、何が仕事に役立ったかを具体的に返します。
「昨日、途中で確認してくれたので、先方に送る前に直せました。あのタイミングの相談は助かりました」
人柄を評価する言葉だけでなく、実際の行動と仕事への影響を伝えます。改善点がある場合も、「ここはできていた。次はここを変えよう」と分けて話せます。
上司が見直したいのは、声かけの後の反応
「まずやってみよう」と伝えても、やり方が自分と違うたびに全部直していたら、相手は次にどう動けばよいか迷うでしょう。
質問を歓迎しているつもりでも、忙しいときには強い口調になっていないか。困りごとの報告を受けたときに、事情を聞く前に評価していないか。
自分の言葉と、その後の対応がそろっているかも大切です。
組織行動研究では、心理的安全性とチームの学習行動との関連が報告されています。ただし、この研究から、特定の部下が動かない原因や、一つの声かけの効果が分かるわけではありません。Edmondson(1999)研究概要
必要な仕事の基準は伝える。そのうえで、分からないことや懸念を確認できる関係をつくる。その両方を考えたいと思います。
次の面談で使う、3つの確認
次の面談では、次の3点を一緒に言葉にしてみてください。
- 何に困っているか:「今、どこで止まっていますか」
- 何をするか:「次の確認までに、どこまで取り組みましょうか」
- どう支えるか:「私の説明や支援で、必要なものはありますか」
最後に、次の確認日時を決めます。上司が一方的に決めた目標を読み上げるだけにならないよう、本人の理解と実行できる見通しも確かめます。
人の目を、急に気にしなくなる必要はないと思います。気になりながらでも、誰かと一緒に一つやってみる。その経験を次の一歩につなげていく。
私は、そんな方向へ進んでほしいと思っています。
部下への声かけを、職場に合う形で練習したい方へ
言い方の例を読んでも、実際の面談で使おうとすると、いつもの言葉に戻ってしまうことがあります。
ぽるとソリューションの管理職研修では、自分の指導のクセ、相手の話を聴く姿勢、質問の仕方、相手に合わせた伝え方を、対話とワークで見直します。注意や評価面談を想定したロールプレイも行います。
この記事のテーマは、研修で扱う「自分の価値観と当たり前」「本音を引き出す質問」「相手に合わせる伝え方」「言いにくいことを伝える練習」につながります。
「部下に何と言えばよいか、管理職ごとに悩んでいる」
「注意すると萎縮され、話が続かない」
そんな職場では、実際に困っている場面をもとに、研修内容をご相談いただけます。
よくあるご質問
人の目を気にする部下には、厳しく接しない方がよいですか?
必要な基準や改善点は伝えます。ただし、性格への評価や他人との比較で終わらせず、「どの行動を、いつまでに、どう変えるか」を具体的にします。相手が理解したか、実行の妨げがないかも確認してください。
声かけを変えても動かない場合は、どうすればよいですか?
言葉だけで判断せず、業務量、知識や経験、役割、権限、本人の理解を確認します。合意した行動と支援内容を記録し、決めた時点で振り返ります。一度の会話で変わると決めず、状況に応じて仕事の任せ方も見直します。
著者:満田 明弘(まんトレ)
株式会社ぽるとソリューション代表。保険代理店の経営経験をもとに、職場の伝え方・聴き方を扱う研修を提供。全米NLPトレーナー/LABプロファイル®トレーナー。
代表プロフィール

28歳の時保険代理店業で起業し、保険会社の年間表彰に5年連続で選ばれる会社に育てる。
そのすぐ後、スタッフの半分が一気に会社を辞める事態になり「自分を変えなければ」と発起しNLPや心理学を本気で学ぶ。
『過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる』ことを知り、全国の経営者やビジネスパーソンにもそれを伝えるため、セミナー活動や研修活動をしている。
【保持資格】
全米NLP トレーナー・LABプロファイル®トレーナー
交流分析士・心理カウンセラー・行動心理士







